産科
- 里帰りで母子医療センターでの分娩を希望しているのですが?
- 他院で妊婦健診を受診し、母子医療センターで分娩を希望する場合も、妊娠初期に母子医療センターを受診していただき、分娩予定月の予約枠内であれば、分娩をお受けしています。原則、予定日決定(だいたい妊娠9~10週)まで当院に通院していただき、分娩予約の手続き、妊娠初期の採血検査、ハッピーバース(両親学級)予約の手続きを行います。それ以降はもとの病院で妊婦健診を受診していただいて結構ですが、妊娠32週以降の妊婦健診は当院で受診していただきます。
- 母子医療センターでお産する予定がないひとは診てくれないのですか?
- 母子医療センターで妊婦健診のみ受診し、里帰りなどのために他院で分娩することはできません。ただし、産科以外の大きな病気を合併している場合、セカンドオピニオンをご希望の場合などは相談に応じます。母子医療センター外来にお電話にてご相談ください。電話での相談は月曜~金曜日の午後2時~4時にお願いします。
- 学生の見学があると聞いたのですが?
- 当院は教育施設の附属病院ですので、医学生、看護学生、助産学校の学生が実習をさせていただいています。このため妊婦健診や分娩・手術の見学、分娩介助実習への協力(助産学生の場合)をお願いすることがあります。見学をお願いするにあたっては、あらかじめ見学の可否について意志確認をさせていただきます。また、できるだけ少人数(通常1~2名)でマナーを守り、プライバシーの保持には十分注意するように指導しております。なにとぞご協力をお願いします。
- 医師の指名はできますか?
- まことに申し訳ありませんが、現時点では人員数その他の理由で担当医師の指名はお断りしています。ただし当センターでは病棟分娩担当・当直医師は、全員が常勤医師(ふだん外来を担当している医師)です。お産のときに担当する医師はおそらく健診のときに何度か会ったことがある医師になると思います。
- 超音波の写真はもらえますか?ビデオはもらえますか?
- まず、当センターでは妊婦健診のたびに超音波検査を行うわけではないのでご了承ください。妊娠初期(おおむね妊娠12週ごろまで)は毎回超音波検査を行いますが、それ以降は規定の週数(妊娠20週前後、30週前後、36週)に超音波検査を行います。このさい、写真はご希望があればお渡ししますので、担当医師にお申し出ください。ビデオ録画は機材の関係でできませんのでご了承ください。
- 妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)とは何ですか?
- 妊娠中に、血圧が上がったり、尿にタンパク質が出てきたり(普通は出ません)する病気です。放置するとおなかのなかで赤ちゃんの発育が悪くなったり苦しくなったりします。またお母さんのけいれんのような発作が起きることがあります。お母さん自身のご家族に血圧が高い人や妊娠高血圧症候群になったことがある人が、比較的なりやすいと言われていますが、原因はよくわかっていません。予防には、栄養のバランスの良い食事(塩分が多すぎないこと、カルシウムを十分に含んでいること、緑黄色野菜などでビタミン・ミネラルを十分にとること)と、過労にならないように注意することが必要です。
- 妊娠糖尿病とは何ですか?
- もともと糖尿病の素質を持ったお母さんが、妊娠中に糖尿病と同じような体の変化をおこしてしまうことを言います。お腹の赤ちゃんが大きくなりすぎてしまったりすることで、お産のトラブルが増えることが多いのですが、妊娠中の食事療法などでかなり防げるとも言われています。当センターでは、妊娠中期(22~25週)に全妊婦さんを対象に糖尿病の検査を行っています。また、近いご家族に糖尿病の方がいらっしゃる方、年齢が高い方、体重が多い方については、妊娠糖尿病になる危険性が高いと言われているので、妊娠初期にも糖尿病の検査をさせていただいています。
お産について
- 立会い分娩はできますか?
- 夫(パートナー)のみ立会い分娩ができます。立会い分娩をご希望の方には3回目のハッピーバース(両親学級)にご夫婦で参加していただくことを推奨しています。陣痛室での面会は面会時間内(平日15:00~20:00/土日13:00~20:00)は夫(パートナー)・ご両親(義両親含む)・祖父母が可能です。面会時間外と分娩室は立会いの同意書を提出された夫(パートナー)のみとなります。上のお子様(赤ちゃんのごきょうだい)は陣痛室・分娩室には入れませんのでご了承ください。
- 陣痛促進剤は使うのですか?
- 当センターでは、可能な限り自然分娩を目指しています。陣痛促進剤は医学上の必要性がある場合にのみ使用しています。具体的には、破水後ある程度待っても自然陣痛が来ない場合、予定日を大幅に超過した場合、お産の途中で陣痛が弱まってしまったがお母さんや赤ちゃんの状態からみてお産を急いだ方が良い場合、などです。
- 会陰切開はするのですか?
- 全員の方に切開を入れているわけではありません。切開を入れないと会陰部の裂傷がひどくなりそうな場合、赤ちゃんの状態からみてお産を急いだ方が良い場合に行っています。
- お産の入院のときに剃毛はするのですか?浣腸はするのですか?
- どちらも行っていません。
- 無痛分娩はできますか?
- 一日の人数制限や、曜日・時間帯制限はありますが行っています。
詳細はこちらをご覧いただくかお問い合わせください。
- 分娩のときの体位は選べますか?
- 施設等の都合上、基本的にはフリースタイル分娩には対応できませんのでご了承ください。
産後について
- 産後は何日間入院するのですか?
- お産が初めての方は、お産した日を0日目と数えて、経腟分娩の場合は5日目、帝王切開の場合は7日目の退院となります。お産が2回目以降の方は経腟分娩の場合は4日目、帝王切開の場合は6日目に退院となります。いずれの場合も産後のお母さんと赤ちゃんの経過によって前後することがあります。
- 産後のお部屋は選べますか?
- お部屋は患者様の病状にあわせて決めさせていただいています。また申し訳ございませんが、産後の個室の希望に関してご用意がございませんのでご了承ください。
- 母子同室って疲れませんか?
- お産後すぐから赤ちゃんとお母さんが一緒に過ごすことは本来自然なことです。母子同室することは、赤ちゃんにとってお母さんにいつでも欲求を満たしてもらうことができる幸せな環境となります。お赤さんにとっても、早期から赤ちゃんと過ごすことで、赤ちゃんの様子や変化を知ることができ、赤ちゃんとの生活や育児に慣れることで、退院後安心して過ごすことができます。また、いつでも赤ちゃんの欲しがるだけ母乳をあげられることで、母乳育児がうまくいきやすいと言われています。そして何より、お母さんになった実感や喜びを感じられ、母子の絆を深めることができます。私たちスタッフ一同は、お母さんと赤ちゃんの体調やペースに合わせて母子同室のお手伝いをしていきます。帝王切開術後の方にも、術後当日お部屋に戻ってすぐから母子同室をすすめています。
- 面会に行きたいのですが?
- 病院全体としてはお子様連れの面会はご遠慮いただいていますが、母子医療センターでは産まれた赤ちゃんのごきょうだいに限り、面会可能としています。ただし、体調不良の場合、熱がある場合にはご遠慮ください。NICUの面会はきょうだいの場合2歳以上で、当センター医師の事前健康チェックをうけていただく必要があります。事前健康チェックはお時間をいただく場合がありますのでご了承ください。9ー2病棟には面会制限があります。面会出来る方は、患者様の夫(パートナー)、患者様のご両親・義両親・祖父母・患者様のお子様(赤ちゃんのごきょうだい)のみとなりますので、ご了承ください。
いろいろな妊娠・
いろいろなお産について
- 前回のお産が帝王切開でした。今回はできれば自然分娩をしたいのですが?
- 前回のお産が帝王切開の方が,今回の妊娠中に子宮破裂を起こす頻度は0.5~1.0%(1/200~1/100)と言われています。子宮破裂を起こす頻度は少ないですが、起こすと母子ともに重篤な合併症を引き起こします。赤ちゃんの死亡,重大な後遺症の可能性、お母さんの大量出血に伴う輸血、子宮摘出、死亡の可能性などがあります。
赤ちゃんが子宮にいる状態で子宮破裂を起こした際に胎児心拍モニタリングでの異常出現から17分以内であれば児の予後が良好との報告がある一方、17~20分以内に赤ちゃんを娩出しても必ずしも赤ちゃん後遺症を防ぐことができないとの報告もあります。しかも、胎児心拍モニタリングでは予知できない子宮破裂の方が多いと報告があり、早期発見が困難でもあります。
当院では、複数の産婦人科医師での当直体制で分娩管理を行なっていますが、必ずしも子宮破裂から17分以内での赤ちゃんの娩出を確約できる体制にありません。
よって、2012年12月より、当院では、前回のお産が帝王切開の方は、原則として帝王切開での分娩を方針としています。
- 妊娠しましたがどうやら「ふたご」らしいのです。大丈夫でしょうか?
- 「ふたご」の場合、一般的な妊娠に比べて早産や妊娠高血圧症候群になる可能性がより高いと言われています。したがって妊娠中もお産も特別な配慮が必要です。当センターでは妊娠中から双子用の妊婦健診スケジュールを組み、また妊娠中の管理入院なども行って(胎盤が一つのタイプのふたごであれば原則妊娠28週より分娩まで入院となります)、可能なかぎりトラブルなくお産できるようにお手伝いしています。また双子の妊婦さん対象の特別な両親学級も開催しています。お産については、一定の条件を満たせば自然分娩が可能ですが、あとから出てくる赤ちゃんに関してはリスクが若干高いと言われており、帝王切開というのも一つの選択肢です。お産の方針については外来で、または管理入院中などに医師と相談しながら決めてゆきましょう。
- 赤ちゃんがさかごと言われました。普通にお産できますか?
- さかご(骨盤位)の赤ちゃんでも自然に頭が下にもどる場合もありますので、まずはそれを待ちましょう。いわゆる「さかご体操」はあまり効果がないと言われているので、当センターではお勧めしていません。10ヵ月に入ってもさかごが直らない場合は、原則帝王切開術となります。
- 妊娠したのに気づかずにお薬を飲んでしまいました。大丈夫でしょうか?
- いつ飲んだのか(妊娠何週で)、どんな薬を飲んだのかによって、危険性が高いか低いかが異なります。かかりつけの産婦人科の医師に相談していただくか、当センターでの相談をご希望であれば受診してください。この場合は当センターでのお産の希望の有無にかかわらず相談できます。飲んだ薬の箱や中袋などを必ずお持ちください。電話・メールでの相談はできません。
- 親類に病気の人がいて、どうやら生まれつきらしいのですが?
- いわゆる遺伝性の病気かどうか、仮に遺伝性の病気である場合にはどれぐらいの確率で今回の妊娠(あるいは今後の妊娠)に影響するかの相談を「遺伝相談」といいます。当センターではこの遺伝相談にも対応しています。ご心配な場合は、妊娠前に一度ご相談ください。また妊娠中でも相談をお受けします。ただし遺伝相談の担当者が毎日外来で対応できるとは限りませんので、とりあえず受診していただき、後日の遺伝相談専門外来の予約をとっていただくことになります。電話・メールでの相談はできません。
- 連続して2回も流産してしまいました。検査を受けた方が良いのでしょうか?
- 自然流産を2回くり返す場合を“反復流産”、3回以上連続してくり返す場合を“習慣流産”といいます。これらの方たちを対象に、当センターでは『不育外来』を設けており、検査するかどうかについての相談もお受けいたします。可能であればかかりつけの先生に紹介状を書いてもらい、また当センター担当者への連絡も入れてもらってください。
赤ちゃんについて
- 早産で生まれました。助かる率はどのくらいでしょうか?
-
在胎週数や体重、生まれたときの状態や持っている病気によって違いますが、下の表に在胎週数、出生体重別におおよその助かる率をあげておきます。
在胎週数
*表は横にスクロールできます
在胎週(週) 22 23 24 25 26 27 28 29 >30 生存率(%) 30 50 80 85 90 >90 >95 >95 >95 出生体重
*表は横にスクロールできます
出生体重(g) <500 500
-750750
-10001,000-1,500 1,500
-2,000>2,000 生存率(%) 50 70 90 >95 >95 >97
- 後遺症の心配はありますか?
-
早産の赤ちゃんが発育していくうちにみられる後遺症には、言葉や精神の発達の遅れ、手足の運動の障害などがあります。 助かった子のなかで、早産の赤ちゃんの障害の率はおよそ次のようです。
出生体重 後遺症の率 <1,000g 10-20% 1,000-1,500g 5-10% 1,500-2,000g <5% 2,000g <5% 後遺症はごく軽いものから重いものまで含まれます。 入院中の経過である程度予想できるものもありますが、脳波やCT、MRIなどの検査ですべてのことがわかるわけではありません。 一番大事なのは、赤ちゃん自身の成長や発達の具合です。 これについては退院したあとの外来で赤ちゃんの様子をみせていだだきます。
- 早産児がおこしやすい病気はどのようなものがありますか?
-
いろいろな病気の可能性がありますが、生後1週くらいの間におこしやすい病気:呼吸の病気(呼吸窮迫症候群,新生児一過性多呼吸,肺炎) 脳室内出血,敗血症,動脈管開存,高ビリルビン血症(黄疸)など。
生後1週間以降に見られる病気: 無呼吸発作,未熟性骨減少症(未熟児くる病)未熟児貧血,未熟児網膜症,敗血症,壊死性腸炎,新生児慢性肺疾患など。
これらのうち、命にかかわるような重大な病気(程度によっても違います):脳室内出血、肺炎、敗血症、壊死性腸炎など。
- 保育器にはどのくらい入っていますか?
- 赤ちゃんに保育器に入ってもらうのは、観察や保温、酸素投与のためです。保温が必要なのはお母さんのお腹の中の週数として、34-35週くらいまでです。ですから、この時期になって酸素投与が必要なく、呼吸や脈の状態が安定していれば、保育器をでます。
- 体重が減って心配です。
- 赤ちゃんは、お母さんのおなかの中で羊水に包まれていたので、みずみずしく、水分の多い状態です。この水分は生まれてくると余分なものとなり、徐々に体から排出されます。在胎週数や体重、生まれたときの状態によっても違いますが、生後の1週間で150g前後、体重が減るのが普通です。 腎臓や心臓の機能がしっかりしていれば、体重が減ります。 初期の1週間ほどは、体重が減っていたら、赤ちゃんの調子の良い証拠です。
- 栄養はどうやってとりますか?
- 赤ちゃんにとって一番優れているのは、お母さんのおっぱい、母乳です。特に早産の赤ちゃんでは、腸の病気を起こすことが少なく、安全です。はじめは鼻や口から胃に入れたチューブから、注射器を使って入れていきます。赤ちゃんの腸の動きなどを判断しながら少量ずつ(0.5-1ml)からはじめますので、出た分のオッパイを持って来ていただければ、それをあげられます。 しぼり方や冷凍母乳の作り方は、産科やNICUのスタッフにきいてください。 腸の動きが十分でない場合には、点滴で栄養を補います。赤ちゃんによっては1ヶ月以上の点滴が必要な場合があります。
- 呼吸窮迫症候群とはなんでしょう?
- 呼吸窮迫症候群は、早産の赤ちゃんで肺の呼吸する準備がまだ出来ておらず、肺のひらきが悪くなって呼吸が苦しくなる病気です。酸素や機会を使った人工呼吸、肺がひろがる薬(人工肺サーファクタント)などで治療します。この病気の治療はすすんでいて、呼吸窮迫症候群だけで重体になることはまずありません。 はやければ2-3日、遅くとも1週間ほどで、急性期から脱します。人工換気を必要としますので、酸素や換気の圧力のために新生児慢性肺疾患になる可能性があります。
- 新生児一過性多呼吸とはなんでしょう?
- 生まれると赤ちゃんはすぐ呼吸が出来るようになるのですが、一部の赤ちゃんで肺の水分が残り、1-2日間、呼吸が少し苦しくなることがあります。症状は、呼吸が速く、酸素の補充が必要になります。一時的な状態なので2日ほどで楽になります。 この病気による後遺症や合併症はまずありません。
- 胎便吸引症候群とはなんでしょう?
- お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんのまわりには羊水という水があり、赤ちゃんを守っています。羊水の中に赤ちゃんが胎便(胎児の便でネバネバしている)を出してしまい、それを肺の中に吸い込んだために生まれた赤ちゃんの呼吸が苦しくなる病気です。 軽いものは酸素吸入などを行っている間に治りますが、人工呼吸が必要になる場合もあります。また、肺が破れて空気が胸の中にたまってしまう気胸や、肺炎を同時におこして重症なこともあります。 程度によって回復するまでの時間が違いますが、普通は1週間前後で酸素投与の必要がなくなります。
- 新生児慢性肺疾患とはなんでしょう?
- 新生児慢性肺疾患は、生まれた直後の急性呼吸障害(呼吸窮迫症候群等の呼吸が苦しい状態)がよくなってからも、何週間も酸素や人工換気が必要な状態です。 赤ちゃんの肺が未熟だったことに加え、酸素や人工換気の影響で肺が傷むためと考えられています。診断としては、生まれて30日で酸素が必要な赤ちゃん、あるいは修正在胎週数(まだ生まれなかった場合の週数)で36週のときに酸素が必要な赤ちゃんとする方法の2つがあります。 傷んだ肺がよくなるためには、肺の成長がもっとも大切です。ほとんどの場合は、体重が増えて肺が大きくなると徐々に呼吸も楽になり、酸素の必要量が減り、普通の空気で呼吸できるようになります。 慢性肺疾患で症状が重いと、人工換気がなかなかやめられない場合や、やめられても酸素を長い期間(数ヵ月-1年)必要とすることもあります。この場合は心臓の負担の検査をしたり、気管支をひろげるお薬を内服したりする必要が出てくることもあります。
- 脳室内出血と言われましたが大丈夫でしょうか?
- 新生児、特に早産の赤ちゃんは出生前後や全身の状態が悪くなったときに脳血管の調節がうまくいかなくなり、血管が破れて出血することがあります。これは超音波の検査でかなり詳しく診断できます。 発生率は1000g未満の赤ちゃんでは20-50%とされます。程度が軽く小さなものではそのまま吸収されて治ってしまい、後遺症も残しません。 ある程度以上大きなものでは、出血した血液のかたまりが脳を圧迫して脳を傷めたり、脳の中や外側にある髄液という液体の流れが悪くなって脳の中に液体がたまった状態になる水頭症をおこしたりする場合があります。 また、急激に出血がすすんだ場合には、脳室内出血によって命を失うことがあります。例外はありますが、生後1週くらいまでの間に強い出血がなければ、その後悪化することはまずありません。
- 動脈管開存とはなんでしょう?
- 動脈管とは、胎児期に大動脈(体に血液を送る血管)と肺動脈(肺に血液を送る血管)を結ぶバイパスの血管です。胎児期には肺に流れる血液が少なく、動脈管を通して大動脈に血液が流れ、これが胎盤への血液の流れを多くするのに役立っています。 動脈管は生まれるとその役割を終えて、数日の間に閉じていきますが、早産の赤ちゃんの場合、この反応が弱くなかなか閉じないことがあります。生まれてから動脈管がずっと開いていると、大動脈から肺動脈に血液が流れ、肺に血液が流れすぎる状態となって、呼吸が苦しくなり、心臓にも負担がかかります。このとき動脈管に流れる血液は本来腎臓や肝臓、腸に行くはずのものなので、尿量が減ることや(腎不全)、腸が傷んで穴があき腹膜炎をおこす(壊死性腸炎)こともあります。 診断は超音波の検査で詳しくわかります。 治療は、具合が悪くなる前に動脈管を閉じさせることです。これには、薬物療法と手術療法があります。薬物は主にインドメタシン(インダシン)を使用します。ほとんどの場合効果がありますが、これで閉じない場合は手術をして直接この動脈管をしばります。
- 未熟児無呼吸発作とはなんですか?
- 生まれたばかりの新生児では、呼吸は一定のリズムではなく、周期的に速くなったり遅くなったりします。早産の赤ちゃんではこの傾向が強くでます。 脳の機能が未熟で呼吸の命令がうまくでていないためと考えられています。このため場合によっては呼吸が止まってしまい、脈拍が遅くなったり、顔色が悪くなったりすることがあります。これらはほとんどの場合、修正(お母さんのお腹の中の週数として)33-34週頃にはおこさなくなります。また、さまざまな病気の初期症状として見られることがあるので注意が必要です。 治療は、呼吸を刺激するお薬を使い、効果が低いときには人工呼吸器を使用します。成熟して安定した呼吸になったら中止できます。
- 黄疸で光線療法が必要と言われました。
- 日本人の場合、ほとんどの赤ちゃんで、生後1週の間に黄疸がみられます。生まれたときの体重と日数、程度によって治療基準を決めています。 治療法は光を当てる光線療法が主です。程度が非常に強いと黄疸の色素による脳障害が心配されますが、現在使用している基準内で収まっていればその心配はありません。
- 未熟児クル病と言われましたが,どんな病気でしょう?
- この病気はクル病という名前がついていますが、ビタミンD不足のクル病とは違います。早産の赤ちゃんで体重が増えだした頃にカルシウムやリンが足りず骨の形だけ出来て骨が弱い状態です。このため最近は、未熟児骨減少症と呼ぶようにしています。これは急激な成長に見合ったぶんのカルシウム、リンがとれないためにおきるものです。成長が一段落したころによくなっていきますが、極一部の赤ちゃんでは、骨が弱いために骨折をおこすことがあります。 治療には、カルシウム、リンの補充と補助的なビタミンDの内服を使います。
- 未熟児網膜症が心配です。
- 早産の赤ちゃんでは、網膜の血管がまだできあがっていません。網膜は目のレンズから入った像の写るスクリーンの役目をする部分で、この後ろに光を感じる神経が並んでいます。早産の赤ちゃんで、この網膜の血管が異常な成長をしてしまい、重症な場合は網膜が神経からはがれてしまうことがあるのがこの病気です。程度の軽いものは自然に落ち着きます。ある程度以上進んだ場合治療をします。 この状態を悪くする要素がいくつかわかっていて、なるべくそれらを避けるようにしています。 重症な網膜症に影響する一番大きな要素は早産の程度です。早産の早い時期(22-25週)の赤ちゃんでは、7割の方が網膜症となり、そのうち8割の方に治療が必要でした(横浜市大2000年-2001年)。また、26-30週の方では治療が必要だったのは1例だけでした(同)。 網膜症は血管の成長する時期に、眼科医が診察をはじめます。ゆっくり経過するものが多いのですが、予定日前後には様子がはっきりするでしょう。
- 未熟児貧血とはなんですか?
- 貧血になると、赤血球を増加させるホルモン(エリスロポエチン)が体の中に増えて赤血球の量を増やそうとします。しかし、未熟児の赤ちゃんはこの反応が弱く、貧血になってもエリスロポエチンが増えません。このためなかなか貧血がよくならないのです。これを未熟児貧血と呼んでいます。ある程度以上貧血が進んだ場合や、未熟児貧血が予想される早産の赤ちゃんでは、これを補うためにエリスロポエチン製剤を注射します。約2週間で効果が出はじめますが、体重が小さい子や早い時期の早産の子では反応が遅かったり効果が出にくかったりすることもあり、状態によっては輸血が必要になります。 血液の鉄の量を測り、必要なら鉄剤(シロップ)を飲んで鉄を補充します。
- 退院の目安はどのくらいでしょう?
- 次の3つができていれば退院できます。
1.自分でオッパイや粉ミルクを飲めて体重が増える。
2.呼吸や心拍が安定している。
3.注意して観察しなければならない病気がないか、安定している。
以上のことが問題なければ退院できます。 赤ちゃんによって個人差がありますが、目安としては、予定日の1ヶ月前から予定日前後の間と考えて下さい。また、いろいろな状態がありますので、具合しだいでおうちに帰れる場合があります。主治医とよく相談して下さい。
- 退院が決まりましたが、病院にいるほうが安全で安心のような気がします。 体重が十分増えるまで入院していたほうがよいのではないでしょうか?
- 病院は病気の赤ちゃんにとっては必要な場所ですが、呼吸や心拍の観察の必要がなく、自分で飲めて体重が増えるようになったお子さんにとってはおうちが一番です。 哺乳に関しても、直接哺乳ではもちろん、ビン哺乳でもおうちで赤ちゃんとお母さんが繰り返し授乳をしたほうがお互いの練習になります。また、感染の面でも多くの人が関わる病院より、家族だけのおうちのほうが安全です。 以上のようにいろいろな面から見て、赤ちゃんにとって最適な場所は家族のいるおうちです。
- ベビーベッドなど退院の準備がまだですが、最低必要なものはなんですか?
- 必要なものは赤ちゃんが寝る場所と着替え、オムツ類です。 寝る場所は、小さなフトンがあれば十分でしょう。 ベビーバスがなくても、普通の洗面器や洗面台の洗面器を赤ちゃんのオフロとして使うことができます。洗面器の汚れが気になるようなら、ビニール袋などで洗面器をおおってもよいでしょう。 オムツは布でも紙オムツでも使いやすいものを用意して下さい。 ベビーベッドは転落など事故の原因になることがあり、お勧めしません。また、クーファンも置いてある台や椅子からの転落、持っている手がはずれたための事故が起きていますので、お勧めしません。赤ちゃんはだっこが一番です。 自動車で移動する場合には、必ず乳児用のチャイルドシートを使いましょう。
- 早産の赤ちゃんは,病気にかかりやすいと聞きましたが、おうちでは何に気を付けたらよいのでしょうか?
- 赤ちゃんはお母さんから免疫を貰って生まれてきます。早産の赤ちゃんは貰ってくる抗体の量が少なく、退院後の1年間に気管支炎などで具合の悪くなる率は高いとされています。 しかし、カゼをひいたりするのを防ぐためにできることは、あまり多くありません。主に予防が中心になります。たくさんの人がいる場所にいくのは避けましょう。また、赤ちゃんのいる部屋にたくさんの人がくることも止めておきましょう。 いずれにしてもお母さんからの抗体は、徐々に分解されて減っていきますが、予定日から4-6ヶ月ほどすると自分で抗体をつくれるようになり、予定日前後に生まれた赤ちゃんと差がなくなってきます。 また、退院するまでに酸素が長く必要な場合や、退院後も酸素を使っている赤ちゃんは、気管支炎などで状態が悪くなることがあるので、状況によって主治医と相談しながら判断していきましょう。
- ワクチンはどのように受ければよいのでしょうか?
- 1歳までに受けられるワクチンは、ヒブ、肺炎球菌、ロタウィルス、BCG、三種混合(ジフテリア,百日咳,破傷風)、ポリオです。ロタウィルスは生後6週間、ヒブ、肺炎球菌は生後2カ月、その他は生後3ヶ月を過ぎれば受けられます。 ヒブ、肺炎球菌のワクチンは、両方とも細菌性髄膜炎を防ぐワクチンです。ロタウィルスは赤ちゃんの重症の下痢を引き起こすウィルスで、2011年からワクチンが使えるようになりました。 BCGは乳児期の重症結核を防ぎます。三種混合のうち百日咳は乳児期にかかると重症になることがあります。ぜひ受けましょう。ポリオは機会があれば受けておきましょう。 1歳以降に受けるワクチンは、麻疹(はしか)、風疹などがあります。はしかは重症になる病気で特別な治療ができません。効果も高いワクチンですから、時期がきたらすぐ受けましょう。
- 冬のカゼの予防注射とはどういうものですか?
- RSウイルス(Respiratory syncytial virus)の予防のことですね。 これは冬に多く流行する感染症で、乳児がかかると呼吸困難や、呼吸が止まるなど重症になることがあります。今のところワクチンがありません。早産児がかかると悪化することがあるので予防の免疫グロブリンを使う場合があります。対象になるかどうかは生まれた週数や入院中の状況によって変わりますので、主治医にきいてください。
- 病気の赤ちゃんについての両親向けの本を教えてください。
-
NICUに入院した赤ちゃんを持つご両親に参考になる本を何冊か紹介します。
『小さな赤ちゃんトロント小児病院・未熟児の両親のためのテキスト』
メディカ出版2,000円『障害を持つ子を産むということ 19人の体験』
中央法規1,800円『ようこそダウン症の赤ちゃん』
三省堂1,400円